よくわかる
金の需要と供給

2016年08月9日
 

金の需給統計データは価格予想に
不可欠な“金の決算書”

モノの価格は需給バランスによって決まります。需要が供給を上回ると価格は引き上げられ、逆に需要が供給を下回ると価格は引き下げられます。この結果、価格は高すぎれば安い方向に、安すぎれば高い方向に動き、最終的にはバランスのとれた所に落ち着くというわけです。金相場も当然、金の需要と供給に大きく左右されますので、将来の金の価格動向を占ううえで、金の需給状況は重要なファクターと言えるでしょう。

株を買うときにはその企業の財務諸表を見て、売上高や経常利益、キャッシュフローなどをチェックしますが、金の需給を把握するには、GFMS社など世界的な貴金属調査会社が発表する需給統計データを利用します。この統計データは四半期ごとに発表され、まさに“金の決算書”とも言えるでしょう。

市場に出回る約7割が新たに生産される「新産金」

まず、金の供給サイドから見ていきます。

金の供給源としては、(1)鉱山から毎年新たに生産される「新産金」、(2)宝飾・産業用のリサイクルによって回収される「スクラップ回収」、(3)業者全体のヘッジ売りのトータルである「ネットヘッジ売り」――があります。

下表のように2015年の新産金量は3,158トンで、市場に供給された金全体(合計4,306トン)の約7割を占めています。

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2016年から金は減産トレンドに!?

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国別の生産量では、1位が中国、2位が豪州、3位がロシアです。金の産出国というと南アフリカというイメージが強いのですが、じつは2007年以降、生産の主役は南アフリカから中国に移っています。南アフリカはアパルトヘイト政策の撤廃をはじめ、生産コストが上昇していることやインフラが不安定なことなどから生産量が右肩下がりで減少しています(下の折れ線グラフ参照)。

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2015年、世界全体の金生産量は史上最大を更新したものの、1位の中国は減産に転じています。高コストの小規模鉱山が閉鎖に追い込まれていることが要因のようです。さらに、環境保護規制の強化などによって新規鉱山開発にブレーキがかかる可能性も指摘されており、今後の見通しは明るくありません。

こうした中、GFMS社※は、2016年から金は世界全体でも減産トレンドに入る可能性が高いと予測しています。もしその通りになって市場への供給が減ると、金価格が上がる可能性があります。これから金投資を考えている人にとっては好材料といえるでしょう。

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※GFMS社とは、貴金属市場の調査分析を専門に行っている会社。同社の需給統計を含む報告書は世界で最も信頼が厚く、金関係者のバイブルとなっています。

ドル建て金価格はコスト割れの水準

さて次に、投資家が金の底値の目安として注目する鉱山会社の「生産コスト」について説明します。掘削や精錬などの直接的な経費だけでなく鉱山会社の経営にかかわる会計上の経費も加味したコストをオール・イン・コストと呼びますが、2015年の世界平均のオール・イン・コストは1トロイオンスあたり1,310ドル。ここから特別コスト(会計上の減損損失)を除いた生産コストは1,175ドルでした。これよりも金価格が下がると鉱山会社は掘れば掘るほど赤字になってしまいます。

またここ数年生産コストが減少していますが、これは不採算鉱山のリストラが進んでいることを意味しており、将来の減産要因となります。実際、GFMS社も2016年から減産に転じる可能性が高いと予想しています。

世界中の金を日本人が買い占めることができる!?

次に金の需要サイドとしては、宝飾品、産業用、個人投資(金地金、コイン)、公的購入(中央銀行の購入)、金ETFが挙げられます。割合でみると宝飾品が約半分。やはり、金のジュエリーや時計の人気は根強いですね。

さて、金の地上在庫(今まで掘られた金の総量)は18万6,200トン(2015年末現在)で、時価総額にして771.05兆円になります。金額が大きすぎてイメージしづらいのですが、日本の個人金融資産合計が1,741兆円(2015年末)ですから、じつはその半分以下。その気になれば日本人が世界中の金を買い占めることもできるわけです。

ただ逆に見れば、それほど金の総量は少なく、新産金による増加も年2%未満であり、希少性が高いともいえるでしょう。


2008~13年まで右肩上がりで増え続けた金地金投資

ここ10年、金の需要量として特に変動が激しいのは投資需要です。下表はまず世界の金地金投資の推移ですが、2008年から概ね右肩上がりで増え続け、2013年にピーク(1408.2トン)を迎えていることがわかります。この間の金価格は、投資需要に連動してどんどん上がっています。

2014年以降は、米国の景気回復、ドル高を背景に投資ニーズが弱まり、金地金投資需要は年間約850トンで推移しています。

2003年の誕生後、2012年まで残高が伸び続けた金ETF

この投資需要の盛り上がりの立役者となったのが金ETFです。金ETFとは、金現物を裏付けとした、金価格連動型上場投資信託のことです。

2003年に豪州でスタートして以来、2012年まで一貫して残高(金保有量)が増加してきましたが、13年から減少に転じました。米国の景気回復を背景に、リスク回避のための金ETFから他の金融商品に資金が流れたことが主な要因と考えられます。

しかし、2016年に入ると、米国の景気回復に不透明感が生じ、米利上げ期待の後退からドル安が進行してきたことから、金ETFの残高は急速に回復しています。

※ニューヨーク、ロンドン、シドニー、ヨハネスブルグ、iシェアーズ、ドバイ合計の残高

2010年、22年ぶりに買い越しに転じた中央銀行

最後に公的機関(中央銀行)による金の保有量についてです。

各国中央銀行は、自国通貨の為替レートの安定や外貨債務の支払いに充てるための外貨準備高の一部として外貨(主に米ドル)や金を保有しています。1990年代から欧州中銀を中心に保有している金を売却し続け、その保有量は年々減少傾向を辿っていました。その理由としては、(1)米ドルが強かったため、安全資産として保有する必要性が弱まったこと、(2)金価格が長期にわたる下落トレンドにあったこと、(3)高金利時代だったため、金利のつかない金のデメリットが鮮明になったこと――などが挙げられます。

しかし、2001年の米同時多発テロ以降、地政学リスクの高まりと世界的な金融・経済危機によって、基軸通貨である米ドルに対する信認が揺らぐ中、ドル偏重傾向があった外貨準備政策の見直しに迫られた新興国が急激に金を買い始めたのです。それによって、中央銀行は全体で売り手から買い手に変わり、2010年には22年ぶりに買い越しに転換しています。

 

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