各国の中央銀行が
金を保有する理由とは?

2016年09月9日

世界の中央銀行が保有する金は地上在庫の17.6%

国の金融の中心となる機関といえば、中央銀行です。日本では日本銀行、米国はFRB(連邦準備制度理事会)、英国はイングランド銀行、ドイツはドイツ中央銀行、ユーロ圏はECB(欧州中央銀行)がこれにあたります。その役割は、(1)通貨を発行して安全に流通させること、(2)金融政策を通じて物価の安定を図ること、(3)金融システム(お金の調達や運用などを円滑に行うための仕組み)の安定化を図ること――です。

世界の中央銀行は、外貨準備として外貨(主に米ドル)の他に、金も保有しています。外貨準備とは、為替介入の資金として使用され、自国通貨の安定と通貨危機に備える資産のこと。WGCが2016年8月に発表したデータによると、各国の中央銀行が保有する金を合計すると約3万2,800トンで、これは地上在庫18万6,200トン(2015年末時点、GFMS調べ)のおよそ17.6%にも上ります。そして、これだけのビッグプレイヤーですから、その売買の動向は、歴史的にも金相場の大きな変動要因の一つになっています。

金を一番たくさん持っているのは米国FRB

今も昔も金を最も多く保有している国は米国です。世界の中央銀行が保有する金の約25%にあたる8133.5トンを保有しており、2位のドイツ(3,378トン)の2倍以上。なぜ米国はこんなにたくさんの金を持つ必要があるのでしょうか。

それは、かつて「金ドル本位制(ブレトン・ウッズ体制)」を採用していたことに関係しています。金ドル本位体制とは、世界共通の価値を持つ金とドルの交換比率を1トロイオンス=35ドルと決めて、各国の通貨とドルの為替レートを固定化する制度のこと。この制度は1971年8月に停止されますが、その後も米ドルは世界で最も信頼度が高く、世界中で使用される通貨としての地位を維持することになります。

さて、世界の基軸通貨である米ドルを自国通貨とする米国は、外貨準備として他国の通貨を持つ必要がありません。その代わりとして、自国通貨の価値や信頼感の裏付けとして、無国籍通貨と呼ばれる金を保有しているというわけです。

為替相場の安定を図る国際機関、
IMFも金を大量に保有

米国、ドイツの次に金を多く保有しているのは、1945年12月に設立された国際機関のIMF(国際通貨基金)です。IMFは、国際的な金融協力や為替相場の安定を図る目的で設立された国際機関で、対外的に支払い困難、つまり外貨不足に陥った加盟国へ一時的な外貨の融資や、加盟国の経済・金融情勢をモニターして経済政策に関してアドバイスを行うなどのサポートをしています。2016年5月現在の加盟国数は189カ国と、世界のほぼすべての国がメンバーです。

じつは、外貨不足に陥らないように加盟国の中央銀行に外貨準備を義務づけたのがこのIMFです。加盟国は、外貨準備の一部として金をどれだけ持っているか、IMFに申告しなければなりません。

1990年代に金相場は値崩れ。
その原因は欧州各国が売却に走ったせい!?

次いで金を多く持っているのが、イタリア、フランスをはじめとする欧州各国です。欧州各国は1950~60年代にかけて保有量を急増させています(下記グラフ参照)。数多くの戦争を経験してきた国だけに、金への信頼度が高いことが影響しているのでしょう。

ところが、1990年代に入ると、欧州各国の中央銀行は金を売却し始めます。というのも、金は金利がつかず、価格も低迷していたからです。

なかでもイギリスは、2000年前後に保有している金を大量に売却。しかも、1オンス=250ドル台という歴史的な安値水準で400トンもの金を売ってしまったため、今でも国の財産を喪失させたと非難する声があるようです。

しかし、金価格が安値更新を続けるようでは、金を大量に保有する中央銀行の財務内容が悪化してしまいます。そこで、欧州を中心とした中央銀行はIMFの総会で売却規制のルールをつくりました。それが1999年9月に発表された「ワシントン協定」です。

このときのワシントン協定には、主に次のようなことが盛り込まれています。

○金は重要な準備資産であることを認識する。

○決定済みの売却を除いて市場に売り手として参加しない。

○年間の金売却量は400トン以下、5年間で最大2000トンを超えないこととする。

○金の貸し出し、デリバティブ取引を拡大しない。

○協定は5年後に見直す。

この協定には、米国やIMF、BIS(国際決済銀行)なども同意していて、主な中央銀行はすべて協定を守っています。その甲斐あって、それ以降中央銀行の金売却量は減少します。

現在の第4次協定(2014年9月~2019年9月)では売却量は制限していませんが、これは中央銀行が売り手となって金相場が値崩れするような心配がなくなったからでしょう。

新興国の金保有が急増し、
中央銀行全体で買い越しに

こぞって売却した欧州各国に対して、積極的に金を購入し始めたのが新興国の中央銀行です。著しい経済成長で輸出が拡大して外貨準備高が増加したこと、ドル偏重傾向にあった外貨準備の構成比率の見直しを図ったことなどを背景に、2000年以降、金保有量が急増しています(下記グラフ参照)。世界的な金融・経済危機によって、基軸通貨である米ドルに対する信認が揺らいでいることも要因の1つに挙げられるでしょう。

新興国の金保有ランキングを見ると、中国はイタリア、フランスに続く5位、ロシアが6位(IMFを除く)。WGCの2006年末と2016年8月発表数値を比べると、中国とインド、トルコは3~4倍、韓国は約8倍、メキシコは約41倍にも増えています。

その結果、中央銀行全体では、売り手から買い手に変わり、2010年には22年ぶりに買い越しに転換しています。

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金保有量の増大は不透明な世界情勢を反映

これまで見てきたように、欧州の中央銀行を中心とした金売却の一巡、増加傾向にある新興国の金保有残高、そして22年ぶりに買い越しに転じた中央銀行全体の売買動向は、今後の金相場を支える大きな要因となるでしょう。

しかし、中央銀行の金保有量の増加は、裏返せば、世界情勢が不透明になっていることの表れでもあります。世界経済や新興国経済の減速、欧州の政局不安、英国のEU(欧州連合)離脱選択、そしてそれに伴う欧州分裂の危機、頻発するイスラム国によるテロなど、リスク拡大が懸念される世界情勢を反映しているともいえるでしょう。

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