リーマン・ショックから学ぶべき教訓

2016年10月25日

「リーマン・ショック」とは、当時米国第4位の投資銀行だったリーマン・ブラザーズが2008年9月に破綻したことをきっかけに起きた世界的金融危機のことです。負債総額が約6,000億ドル超(約60兆円)という史上最大規模の大型倒産は、世界中で株価の暴落を引き起こしました。

いったいなぜ、リーマン・ブラザーズはこんな事態に陥ってしまったのでしょうか。その背景には、資産運用や投資を考えるうえで、私たちが学ぶべき教訓が隠されています。まずは、同社が経営破綻に至るまでの流れを振り返ってみましょう。

1.始まりは米国の低金利政策だった

そもそもの始まりは、米国の金融緩和(低金利)政策でした。米国では、ITバブルが2001年に崩壊し、その年の9月11日には同時多発テロが発生しました。こうした状況のなか、低迷する経済の立て直しを図るため、米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は金融緩和策を打ち出します。世の中の金利を引き下げてお金を借りやすくし、企業の設備投資や個人消費を増やして経済を活性化しようと考えたわけです。

結果、政策金利は2003年6月~2004年7月には戦後最低水準の1%に。その影響で住宅ローン金利も下がり、マイホームを購入する人が一気に増えていきました。何となく今の日本の状況に似ていますね。日本は今ご存知のようにマイナス金利。住宅ローン金利も史上最低水準となり、住宅を購入する人が増加中です。

2.住宅バブルとサブプライムローン

当事政権を握っていたブッシュ共和党は、マイノリティや低所得者に対する住宅取得を奨励していました。そこで大きな役割を果たしたのが、信用力の低い人向けに住宅融資を行う「サブプライムローン」です。

住宅価格が右肩上がりに上昇していた時期であったため、低所得者がサブプライムローンで住宅を購入しても何の問題もありませんでした。購入した住宅を転売して売却益を得たり、担保力が上がってさらにローンを借り増すことができたのです。住宅を購入する人はますます増えて住宅価格は高騰し、まさに「住宅バブル」が起きました。

ところが、このサブプライムローンはクセモノでした。当初2、3年は優遇金利で金利が低いものの、優遇期間が終わると一気に金利が上がる仕組みになっていたのです。そのため、後に住宅ローンの焦げ付きが大量発生してしまいました。

3. 証券化によってサブプライムローン債権が世界中に拡散

この頃、銀行などの金融機関は、サブプライムローンを証券化し、証券会社や投資銀行に売却していました。そうやって得た資金でさらに新たな住宅ローンの貸出を行い、サブプライムローンはますます拡大していきました。

証券化とは、ローンや不動産といったキャッシュフロー(お金の流れ)を生み出す資産を裏づけとして有価証券を発行し、投資家に販売して資金調達すること。裏づけとなる資産には、住宅ローン債権、企業向け貸付債権、消費者ローン債権などがあります。

一方で、購入側の証券会社もサブプライムローン債権を裏づけとした「住宅ローン担保証券」や、他の社債や消費者ローンなどと組み合わせた「債務担保証券」などの新商品を開発し、多くの機関投資家などに販売していきました。

さらに、これらの商品の元本を保証する「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)」という商品も誕生させました。これは、ローン債権などの信用リスクに対して、保険の役割を果たすデリバティブ契約のこと。買い手は保険料(プレミアム)を支払う代わりに、対象の債権がデフォルト(債務不履行)になった場合、それによって生じる損失(元本・利息など)を保証してもらえます。これに対して、売り手は保険料を受け取る代わりに、万が一デフォルトになった場合、買い手に対して損失分を支払う仕組みになっています。この売り手の中心にいたのがリーマン・ブラザーズだったのです。

CDS契約をすると、万が一の場合でも元本や利息は保障されるので、債権の格付けが高くなります。このため、証券化商品には次々とCDS契約が行われていき、その高い格付けを信用した世界中の機関投資家(銀行など)が、さらに大量に購入するという流れができました。

こうしたサブプライムローン債権の証券化と拡散の流れが、後にサブプライムローン問題を深刻化させ、リーマン・ショックの要因になったのです。

4.住宅バブルが崩壊

サブプライムローンの普及で、住宅を購入する人が増え、住宅価格は急騰しましたが、それも長くは続きませんでした。

米国の不動産価格の推移を表す「S&Pケースシラー・全米住宅価格指数」を見ると、2006年7月にピーク(184.6)をつけ、その後、下降に転じていることがわかります。

住宅バブル崩壊の要因の1つとなったのが、2004年6月以降の政策金利の引き上げです。物価の高騰を危惧したFRBは、景気を冷やすため金融の引き締めにかかりました。世の中の金利を引き上げてお金の調達コストを上げ、企業の設備投資や個人消費を抑えて過熱した景気を冷やすのが狙いです。

当然、住宅ローンの金利も上がります。こうなると、住宅を購入する人が減る一方、変動金利型の住宅ローンを借り入れていた人の中には、返済できなくなり住宅を手放す人が出始めます。低所得者が借りているサブプライムローンの焦げ付きも大量に発生しました。住宅は売れなくなり、価格もどんどんダウン。こうしてついに住宅バブルは崩壊したのです。

5.リーマン・ブラザーズが経営破綻

こうなると当然、金融市場にも証券化商品を不安視する動きが広がっていきます。証券化の裏づけとなる資産の価格が下がれば、証券化商品自体の価格も下がるからです。そしてついに、証券化商品の買い手はいなくなり、価格は暴落。取扱いの多かったリーマン・ブラザーズは経営状況が悪化し、ついに経営破綻に至りました。

リーマン・ブラザーズを破綻に追い込んだ直接的な要因は、前述した「CDS」です。通常、CDSの債務不履行の際の支払額は、高度な金融工学で売り手が損をしないように算出されるのですが、今回はサブプライム問題があまりにも想定外だったため、多くのCDS契約において保険金の支払いが発生しました。なかでも、CDSの大半を引き受けていたリーマン・ブラザーズは履行が不能なほどの巨額の保険金支払い債務を負い、その結果破綻してしまったのです。

リーマン・ブラザーズの経営破綻のインパクトは大きく、世界中の株式市場で株価が急落し、金融不安が起こりました。これが「リーマン・ショック」です。その後、世界経済は“ドミノ倒し”のように景気悪化へと突入していきました。

史上最大のボロ儲け!

これまで見てきたように、リーマン・ショックの背景の1つにあったのは住宅バブルです。日本でも1980年代に同じような現象が起きましたが、人はこうしたとき、冷静な判断力を失ってしまいがちです。例えば、住宅価格が上がり続けている状態が続くと、「さらに上がる前に買いたい」と考えてしまう。で、そういう人が増えるほど、ますます住宅価格は上がっていきます。株価も同じです。このように多くの人が同じ方向を見て熱狂し始めたときこそ要注意!バブル崩壊が近いかもしれません。少し距離を置き、落ち着いて物事を見る目が必要です。

じつは、米国の住宅バブル崩壊を予想し、前述したCDSの購入(リーマン・ブラザーズとは逆の取引)によって、2007年に投資史上最大の利益を稼いだファンドマネージャーがいます。それがヘッジ・ファンド「ポールソン&カンパニー」を運用するジョン・ポールソンです。人々が熱狂する中、住宅価格の下落を予想して投資し、大儲けしました。

投資の格言「人の行く裏に花の山」とは、まさにこういうことでしょう。「投資家は、とかく群集心理で動きがちだが、それでは大きな成功は得られない。むしろ他人とは反対のことをやった方がうまくいく場合が多い」(日本証券業協会より)という意味です。投資をする者として、ぜひ覚えておきたい事です。

 

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