ニクソン・ショック後の金相場を振り返る

2016年05月13日

1973年、固定相場制から変動相場制へ

金相場は1971年8月のニクソン・ショック後、それまでの1トロイオンス(以下、オンス)=35ドルの「固定相場制」から現在のような需給バランスによって価格が決まる「変動相場制」へと変わりました。

ニクション・ショックとは、米国のニクソン大統領が電撃的に発表した「ドルと金の交換停止」を柱とする経済政策が世界経済や為替相場に与えた衝撃のことをいいます。このとき米国では、ベトナム戦争の失敗や財政・貿易赤字の拡大で疲弊していた経済の立て直しに迫られていました。

それまで金相場は、ドルの交換比率を1オンス=35ドルと決めて、各国の通貨とドルの為替レートを固定化する「ブレトン・ウッズ体制(金ドル本位制)」(1944年導入)がとられていました。

当時、世界一の経済力を誇っていた米国が、求められれば必ずドルと金を1オンス=35ドルで交換することを約束していたため、ドルを中心として各国の為替相場が固定化されていたのです。これを「固定相場制」といいます。ちなみに、当時の円は1ドル=360円でした。

この固定相場制を維持するため、各国には対ドル相場の変動幅を1%以内に抑えるように為替介入(相場の安定化を図るため、中央銀行が為替取引に参加すること)することが義務づけられていました。

しかし、財政・貿易赤字の拡大によって金の準備量をはるかに超える大量のドルが海外に流出してしまったため、米国はもはやドルと金の交換を保証できなくなり、前述したように「ドルと金の交換停止」をするしかなくなったわけです。

ブレトン・ウッズ体制の崩壊によってドルは信用を失い、大暴落しました。その後、1971年12月にスミソニアン協定で各国は固定相場制の維持を図ろうとしましたが、長続きはせず、1973年に主要通貨は変動相場制に移行しました。

変動相場制は、ジャマイカのキングストンで1976年1月に開催されたIMF(国際通貨基金)の会議で承認され、金の廃貨(金の公定価格の廃止)が決まりました。

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「ブレトン・ウッズ体制(金ドル本位制)」以前はどうなっていた?

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金ドル本位制のように、金を通貨価値の基準とするシステムを「金本位制」といいます。国が発行した貨幣と同額の金を中央銀行が常時保管し、金と貨幣との兌換(引き換えること)を保証するというものです。

金本位制を世界で初めて採用したのは、当時、圧倒的な経済力と軍事力を誇っていた英国です。18世紀までは金と銀がお金の役割を果たしていましたが、その後、希少性や保存性に優れ、世界共通の価値を持つ金が通貨価値の基準となったのです。

英国は1816年に1ポンドの金貨鋳造を始め、1844年からポンド表示の兌換貨幣を発行するようになりました。交換比率は「1オンス=約3.17ポンド」だったそうです。

当時は、18世紀後半から始まった産業革命によって生産性が向上し、世界貿易が拡大していったため、英国に続き、ドイツ、フランス、米国、日本、ロシアも金本位制に移行しました。そして国際通貨制度は事実上、金本位制となったのです。

この英国ポンドを中心とする金本位制は、1914年までおよそ1世紀続きました。しかし、1914年に第一次世界大戦が起きたことでその機能は停止。その後、1925年に英国が金本位制に復帰しますが、1931年には再び金本位制を離脱します。戦争や植民地の独立などによって経済力が衰えた英国への信用力が低下したからです。

そして、第二次世界大戦(1939-1945年)の終わりに近づいた1944年7月、主要各国の代表が米国ニューハンプシャー州ブレトン・ウッズに集まり、戦後の国際通貨制度について話し合いが行われました。そこで決められたのが「金ドル本位制」(ブレトン・ウッズ体制)です。世界の政治・経済の中心は英国から米国に移り、ドルが数ある通貨の中で最も信頼度が高く、世界中の貿易の決済に使われる基軸通貨になったのです。

1970年代は激しいインフレの時代。1980年に歴史的な高値を記録

1970年代は激しいインフレの時代でした。1973年の第一次オイルショック(第4次中東戦争を機にOPEC〔 石油輸出国機構〕が石油価格引き上げ)、1978年の「第二次オイルショック」(イラン革命によって同国の石油輸出が停止し、原油価格が高騰)によって物価が高騰しました。

そして、1979年12月に起きたソ連(現ロシア)のアフガニスタン侵攻をきっかけに金価格がチャートのように急騰し、1980年1月には歴史的な高値を記録しました。

当時、アフガニスタンは親米政権が誕生し、さらにイスラム教徒との戦いで混乱の真っ最中。ソ連は防衛上見過ごすことができず、アフガニスタン全土に侵攻しました。このアフガニスタン紛争は1989年にソ連が完全撤退するまで続きました。

このソ連のアフガニスタン侵攻のニュースをきっかけに、変動相場制になっていた金の価格は急上昇。まさに、戦争や紛争の際、信用リスクのない実物資産の金が買われる“有事の金買い”が起きたわけです。

そのとき、ドル建ての国際金価格は1オンス=875ドル、円建ての国内金価格が1g=6495円を記録しました。

国内金価格はこれが史上最高値です。現時点での国際金価格の史上最高値は後述するとおり2011年9月の1オンス=1923ドルですが、なぜ国内金価格はいまだ史上最高値を更新していないのでしょうか。

それは、円建ての国内金価格は、ドル建ての国際金価格を基に円換算して1gあたりの価格を算出しているため、米ドル/円の為替相場が大きく影響するからです。米ドル/円相場は国内金価格に以下のような影響を及ぼします。

円安・ドル高に進む → 国内金価格が上がる

円高・ドル安に進む → 国内金価格が下がる

1980年1月の米ドル/円相場は1ドル=230~240円程度でした。現在の2倍以上の円安・ドル高水準だったんですね。ですから、国内金価格は当時の史上最高値を更新していないというわけです。

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1980年代はインフレ沈静化の時代

1980年に入ると、米国の高金利政策によって徐々にインフレが沈静化していきます。1980年に高値をつけた金相場はその後、チャートのように長期に及ぶ下降トレンドが続きました。80年代はインフレ沈静化の時代といえるでしょう。

70年~80年代の「インフレ調整後の金価格と米国インフレ率の推移」をみると、激しいインフレの時期でも金価格はインフレ率を上回って上昇し、インフレヘッジ効果を発揮していることがわかります。このように金のインフレヘッジ効果は歴史的にも証明されています。

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1990年代は米国の強い経済とドルの一極体制に。金相場は安値傾向が続く

1990年代になると、米国の景気が上向き、米国の強い経済とドルの一極体制となります。その結果、国際金価格は1999年7月に1オンス=253ドル、国内金価格は同年9月に1g=836円の1980年以降の最安値を記録します。

なぜかというと、米国の景気が良かったからです。米国は1987年10月の「ブラックマンデー」(株式史上最大規模の株価大暴落)を乗り越え、90年代に入って景気が上向きました。この景気拡大は1991年3月から2001年3月まで米国史上最長の10年間続いたのです。

これを後押ししたのは、IT分野の技術革新やIT関連需要の増大などを背景とした旺盛な設備投資や個人消費の拡大でした。この間、米国の株式市場全体の動きを示す「NYダウ(ダウ工業株30種平均指数)」は1991年の3100ドル水準から1999年には1万ドル台まで大きく上昇しています。

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このように米国の強い経済を背景に、ドルへの信頼感が高まったことによって、逆に金は売られるようになりました。「金を保有していなくてもドル建て資産を持っていれば大丈夫」という安心感が広がったからです。

現在でも米ドルの価値が上昇すると金は売られ、米ドルの価値が低下すると金が買われる傾向があります。

2000年代はドルへの信認が薄れ、ドル安の時代に。国際金価格は史上最高値を更新

2000年代に入ると、信用経済から実物経済へのパラダイムシフトが起きます。

米国の景気に陰りがでてきたことや2001年9月11日に起きた米同時多発テロなどによって、ドルに対する信認が少しずつ薄れてドル安になってきたからです。金相場は下のチャートのように長期の下降トレンドから大転換し、徐々に上昇していきます。

これまでの時代の流れと金相場の動向
1970年代:激しいインフレの時代。金相場は80年に歴史的な高値を記録
1980年代:インフレ沈静化の時代。金相場は長期に及ぶ下降トレンドへ
1990年代:米国の強い経済とドルの一極体制の時代。80年以降の最安値を記録
2000年代:ドル安の時代。国際金価格が史上最高値を更新

2008年には米大手投資銀行、リーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発した世界的な金融危機やギシリャの財政不安が招いた欧州債務危機などを背景に、ペーパー資産(株や債券など)への不安から機関投資家を中心に資産の一部を金に振り向ける動きが強まりました。

さらに、米国経済は2011年に入って予想を超える失速を見せたため、8月には当時の米FRB(連邦準備制度理事会)議長のバーナンキ氏が「異例の低金利政策」を2013年半ばまで継続することを発表。また、大手格付会社S&Pが米国債の格下げを発表したことでドル不安が一気に高まり、いっそう金を買う動きが強まりました。その結果、国際金価格は2011年9月6日に1オンス=1923ドルの史上最高値をつけたのです。国内金価格も2013年に33年ぶりに5000円を突破する高値を記録しました。

その後、国際金価格は反転して一時、1オンス=1000ドル水準まで下がりましたが、2016年に入ると世界的な株価下落を反映し、上昇基調が続いています。5月初旬現在、米景気の先行き不透明感から1300ドル水準の高値をつけています。株価が下落に転じ、再び安全資産とされる金に資金が向かっているようです。

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