はじめての金投資シリーズ
- どんな時代でも「金」が必要とされる理由とは?
- 金投資商品ガイド
- 知っておきたい現物と先物の違い
- 金地金のおトクな買い方とは
- わかれば簡単! 金先物取引の仕組み
あなたに合った取引手法はどっち?
金投資は、金を購入して保有し続ける「現物取引」と、短期間で売買して積極的に差益(売買益)を狙う「先物取引」とに大きく分けることができます。今回はこの2つの取引手法にどのような違いがあるかを見てみましょう。それぞれの特徴を押さえておけば、自分の目的に合った取引を選ぶことができます。
<違いその1>投資に必要な資金
あなたがスーパーで100円のダイコンを買うとき、商品と引き換えに100円(総代金)を支払います。現物取引で金を買うには通常の買い物と同じで、総代金が必要となります。例えば1kgが440万円(手数料・税込価格。以下同じ)の金現物を購入するには、440万円が必要です。
これに対して金先物取引は、株の信用取引やFXと同じ証拠金取引です。証拠金取引では総代金の一部の資金(証拠金)を担保に取引することができます。つまり、代金全額の持ち合わせがなくても取引ができます。では、どれぐらいの資金で取引できるのでしょうか。
2016年7月1日現在、先物取引で金を1kg買うのに必要な証拠金は13万5,000円です(※)。金1kgの総代金を440万円として計算すると、約32分の1の資金で取引ができることになります。
※第一商品の必要証拠金。証拠金額は価格の変動によって変更されることがあります。
つまり、買ったら440万円かかる金1kgの現物に投資するのと同じ効果が、13万5,000円で得られるというわけです。これなら、残りの資金を他の運用に回すこともできます。この資金効率の高さが金先物取引の大きな魅力の1つです(図表参照)。
ただし、金価格が大きく値下がりした場合には注意が必要です。値下がりすると、現物取引も先物取引も取引量(kg)が同じなら同じ額だけ評価損(含み損)が生じます。評価損とは、簡単にいえば損をしている“状態”のこと。
現物取引の場合、持っている金の価値が目減りしていることにはなりますが、その時点で金を売らない限りは実際の損失が生じることはありません。
ところが、先物取引の場合は一定以上の評価損が発生すると担保(証拠金)が足りない状態になってしまいます。そのため取引を継続するには、担保不足を補うため追加の資金が必要になることがあります。ですから先物取引では、証拠金の額(投資資金額)と評価損益額をコントロールする「リスク管理」がとても重要になってきます。
ずっと持てる現物、期限のある先物
<違いその2>取引期限
金現物投資は取引期限がなく、何年でも何十年でも手元に置いておくことができます。これに対して金先物取引は取引期限が決まっていて、最長12カ月です。
このため、先物取引では期日(最終取引日)が来る前に反対売買して決済し、差額を清算して取引を終えるのが基本です。これを「差金決済方式」といいます。
例えば、430万円で1枚(1kg)買い、440万円で売って(反対売買して)決済したときは差額の10万円(利益)を受け取ります。逆に値下がりして420万円で決済したときは差額の10万円(損失)を支払います。なお、利益・損失ともに、別途手数料の支払いが発生します。
このように先物取引では通常、取引期限内に反対売買して決済し、差額だけを清算するため、買い手は総代金を用意しなくても済むわけです。
現物と先物取引、短期売買に向いているのは?
<違いその3>取引価格
金現物の取引価格(販売・買取価格)は、それぞれの取扱会社が提示している店頭価格ですから価格はマチマチです。
一方、東京商品取引所に上場されている金先物取引の取引価格は、どの商品先物取引会社で取引しても価格は同じです(ただし、委託手数料が会社によって異なる)。
さらに、リアルタイムの値動きを見ながら機動的に取引できるうえ、「○円以下になったら買い」という様な、買いたい(売りたい)値段を指定した注文を出すこともできます。
先物取引は取引コストが現物よりも安いという点からも短期売買に向いています。しかも、前述したように短期間で決済する予定なら、総代金やモノを用意する必要がない証拠金取引のほうが効率的です。
値下がり局面も利益チャンスに!
<違いその4>取引の始め方
現物取引では、金を持っていないと当然、売ることはできません。しかし、先物取引では金を持っていなくても「売りから取引を始める」ことができます。持っていないものを売る――おかしな話ですが、これはもともと商品先物取引が生産者のリスクヘッジを目的として誕生しているからです。
例えば、米農家の場合、秋に収穫する米の価格がその年、いくらになるかはわかりません。高く売れるときもあれば、すごく安くなる可能性もあります。これではビジネスとしてとても不安定ですよね。そこで考え出されたのが、収穫の前にあらかじめ価格を決めて「売り予約する」というシステム。これが今でいう先物取引です。
先物取引では、現物投資と同じように安く買って高く売ると儲かる「買い」だけでなく、始めに高く売って、後で安く買い戻すと儲かる「売り」からも取引を始められます。つまり、現物は金価格が上がる局面でなければ差益を狙えませんが、先物取引は上がる局面でも下がる局面でも差益を狙えるというわけです。
こんな人におすすめ
- <金現物取引>
○ポートフォリオの分散投資効果を高めたい
○中長期的なインフレ・円安・消費増税対策をしたい
○金(資産)を承継したい - <金先物取引>
○金の短期売買で儲けたい
○資金効率のいい運用を行いたい
○金相場の上昇・下降両局面で利益を狙いたい
金先物取引で金地金を手に入れることもできる
さて、ここまで4つの大きな違いを紹介してきましたが、もうひとつ付け加えておきたいことがあります。それは、金先物取引は実際に金の現物を持たないで売買益を狙う取引ですが、期日まで決済しないで総代金を支払い、金現物(1kg単位)を受け取る「受渡決済」を選択することもできるということです。
もし金地金の受け取りを急がないのであれば、高い投資効率を活かして金先物取引を利用するのも1つの方法。先物取引で買い、予想以上に値上がりしたら決済して利益を確定しハイリターンを実現。逆に値下がりしたらそのまま期日まで保有して金地金に換える。こんなやり方があることも覚えておくと、金投資の選択の幅が広がるかもしれません。
はじめての金投資シリーズ
- どんな時代でも「金」が必要とされる理由とは?
- 金投資商品ガイド
- 知っておきたい現物と先物の違い
- 金地金のおトクな買い方とは
- わかれば簡単! 金先物取引の仕組み