トルコショックで金が上がらなかったワケ

2018年10月24日

ドル高や安全資産としての金に対する失望感から売りに

2018年8月に「トルコショック」が起きました。トルコの通貨リラが対ドル相場で急落。10日に約22%、土日を挟んだ13日には約11%も下げ、過去最安値の1ドル=7.2393リラに。対外債務や経常赤字が大きい他の新興国通貨にも売りが波及し、一時的に世界的な株安も招いています。

セオリーでは、こうした経済的な有事では一般に資金の逃避先として安全資産の金が買われる傾向があると言われています。“有事の金買い”で「これは金が値上がりする!」と予想された方も多かったのではないでしょうか。

ところが、実際には金買いは進まず、むしろ売られる展開に。ニューヨーク商品取引所の金相場は8月13日に1トロイオンス=1,200ドルの節目を割り込み、その後1,170ドル割れまで下落しました。

この時買われたのは米ドルです。市場では米国の利上げ継続観測が根強く、為替相場でもドル高傾向が続いていました。一般にドル高は、米国以外の国(米ドル以外の通貨建て)で取引される金に割高感が生じ、需要を減退させる傾向があります。

この時は「リスクヘッジのために金ではなく米ドル」を持つ人が多く、「安全資産としての金に対する失望感」が逆に売り材料になったというわけです。

自国通貨が不安定なトルコでは金が人気

ただ、トルコリラの急落に伴い、トルコ国内のリラ建て金価格は大きく上昇しました。年初の1トロイオンス=4,880リラから8月には8,640リラまで、70%超も値上がりしたことになります。

国際金価格はドル建て価格が基準となっているため、自国通貨の価値が下落すると、ドル建て金の価格が変わらなくても、国内金価格は自動的に上昇します。円安で円建て金価格が上昇するのと同じ原理ですね。

じつは、トルコ国民は大の金(ゴールド)好きです。歴史的に貨幣価値が不安定だったトルコでは、今でも現金(リラ)よりも金で貯蓄するのが一般的。金を取り扱う店も多く、お祝い事には金貨やジュエリーをプレゼントする習慣があります。

今回の通貨危機では、リラを金や米ドルに替える国民が急増したようです。金の“ラストリゾート“としての面目躍如といったところです。

そもそもトルコリラ急落の要因としては、(1)米国との関係悪化(トルコで拘束された米国人牧師の釈放をめぐり、米・トルコ双方が経済制裁を発動)、(2)トルコのエルドアン大統領の国内経済対策に対する懸念、(3)米FRBの利上げに伴う新興国通貨からの資金引き揚げ――などが挙げられます。

トルコの経済に関しては、高水準のインフレ率と経常赤字が問題視されています。エルドアン大統領の国民に迎合的な景気対策で経常赤字が拡大を続ける一方、リラ安を背景に貿易赤字も増大、物価も大きく上昇していますが、改善のメドは立っていません。インフレ率(1年間の物価上昇率)は、2016年が7.78%、17年が11.14%、18年(8月時点)が17.9%です。

その後、物価安定を目指し、トルコ中央銀行が9月13日に利上げを発表。6.25%引き上げ、年24%としました。先進国に比べると、あり得ないほどの高さですね。利上げ幅は市場予想を大きく上回ったため、トルコリラが買われ、1ドル=6リラ前後まで急騰しています。

しかし、トルコリラの対ドル相場が回復しつつあるとしても、市場では「依然としてトルコの独裁的な政治と輸入に依存した脆弱な経済基盤が懸念される」との見方が大勢です。

他の新興国にも通貨安が波及

新興国の通貨急落はトルコリラだけではありません。アルゼンチンの通貨ペソも対ドル相場で大きく下落しています。通貨防衛のため、アルゼンチン中央銀行は8月30日、年45%だった政策金利を60%に引き上げましたが、通貨安の流れは止まりません。29日の始値31.5365ペソから30日の最安値42.2410ペソまで、急速にペソ安が進みました。

通貨安の流れはブラジルの通貨レアルやインドネシアの通貨ルピアなどにも波及しています。この根底には、米国の利上げによって新興国から資金が流出する流れや、新興国経済に影響が大きい中国経済の先行き不安などがあります。

今のところ、1997年の「アジア通貨危機」のような世界経済を揺るがす事態に発展する可能性は低いと見られていますが、新興国の通貨安や株安がこれ以上広がらないとは言い切れません。

ベネズエラでは通貨単位を5ケタ切り下げるデノミを実施

トルコやアルゼンチンのインフレをはるかに上回るのが南米ベネズエラです。同国のインフレ率は、2018年6月時点で年約4万6,000%。1年前に100円だったモノが4万6,000円に値上がりしたわけですから驚きです。

同国の通貨ボリバルは2018年に入って急落し、17年12月には1ドル=9.975ボリバルだったのが8月にはなんと24万8209.9ボリバルまで、通貨安が進んでいます。米ドル・円相場に例えると、1ドル=100円だった為替レートがわずか8カ月で1ドル=2万4,000円になるのと同じです。

ハイパーインフレの沈静化を図るために、ベネズエラでは通貨の単位を5ケタ切り下げるデノミネーション(デノミ)を2018年8月20日に実施しました。

デノミとは「通貨単位の引き下げ」のこと。例えば、ハイパーインフレによって物価が高騰し、アンパン1個が1万円になったとします。こうなると、買い物に大量の紙幣が必要になり、経済活動に支障が出てきます。そこで、仮に通貨単位を2ケタ切り下げるデノミを行えば、アンパンの価格は100円となるわけです。

同国が実施したデミノは、従来の10万ボリバルを、1ボリバルソベラノ(新通貨)と交換するというもの。独自に仮想通貨「ペトロ」を発行し、その交換比率を一定の割合に保つとしています。

ベネズエラは世界最大級の埋蔵量を誇る産油国、しかも石油会社は国営です。そこで政府は、ペトロを同国の原油価格に連動させることで、新通貨のボリバルソベラノの価値に原油の裏付けを持たせようとしていますが、効果のほどは疑問視されているようです。

もちろん日本がこのような状況になることは考えにくいですが、大なり小なり将来のインフレリスクに備えることは必要と言えそうです。

 , ,

この記事が気に入ったらシェアしよう

トルコショックで金が上がらなかったワケ





金地金・金先物取引などお気軽にご相談ください。
お電話でもどうぞ

動画で学ぶ金投資

金投資について楽しくわかりやすい動画コンテンツです。
大人気GOLD君が大活躍中!是非一度ご覧ください。

  • 第一話 いま話題の金投資って?

  • 第二話 どうして今金が注目されているの?

  • 第三話 金っていくらするの?

動画で学ぶ金投資
資料請求資料請求

テクニカル分析コラムテクニカル分析コラム

J-CASTコラムJ-CASTコラム

アンケートにご協力くださいアンケートにご協力ください

はじめての金投資はじめての金投資

セミナーセミナー
  • カテゴリー

  • 人気記事ランキング

    最新の投稿記事

    注目のキーワード



    " "